特集4 16番で何とか蒸気機関車モデルの製作を復活したいというお話

最近は企画を立てる上で以前のような冒険が全くとは言わないまでも中々出来なくなってしまいました。モデルをプロデュースする者として全く持って物足りない事この上無い程です。特に1997年以来10年間も16番の蒸機製作から離れてしまった事と”田園の唄”シリーズがここのところ途絶えてしまった事は何とも歯がゆい限りです。ただ個人的にも大好きな古典蒸気の模型化は何とか実現して行きたいと考えおり、その時機は常にうかがっておりました。ここで今までに製作した三つのプロジェクトを改めて振り返ってみる事と致しました。

九州鉄道オリジナルスタイル(1996年8月発売)

まず当店の蒸気機関車モデル第一作 アルコ~スケネクタディが1899年~1906年に掛けて九州鉄道に全61両を納入したモーガル機で国有化後の形式8550形。九州鉄道時代の真空ブレーキ、バッファー付スタイルと昭和に入り空制化され関西にまで流れてきたスタイルを特定番号で製作したものです。もしかすると個人的に自分が送り出したモデルの中でこれが一番のお気に入りかも知れません。コンパクトなプロポーションの中に太いボイラーをバランス良くセッティング。パイピングの引き通しも含めディテール表現でこれ以上の製品を知りません。

端正なアルコ~スケネクタディの特徴を再現しております。

九州鉄道の社紋は九つのレールの断面で表しています。

以下は8550空制化バージョンのNO8575(1996年8月発売)

クラウス10形 明治鉱業17号(1997年4月発売)

クラウス10形 大分交通26号(1997年4月発売)

次に手掛けたのがドイツ製蒸機クラウスの10形でした。これも個人的にも思い出深いものです。中学一年の1968年。池袋の西武百貨店の横で売りに出された時、2回も見に行ったのですが30年後に自分の手で製品化するとは夢にも思いませんでした。このモデルについては面白いエピソードがありました。私共はクラウス10形の模型化図面を九州鉄道時代のスタイル、川越鉄道の1、2号機、防府鉄道2号機、大分交通26号機、明治鉱業15号機、17号機と描きましたがこの中より川越鉄道2号、大分交通26号、明治鉱業17号を製品化しました。
その直後、担当したメーカーがドイツ・トリックス社の仕事をしている関係から当店の方からクラウス10形をアレンジして九州鉄道時代の原形か、同じ仕様のドイツ型タイプを製作してみてはとアイデアを出したのですがメーカーサイドは手っ取り早く明治鉱業の17号機を作ってトリックス社に納入する事を契約してしまいました。この時はさすがの私も唖然。明治鉱業の15号機、九州鉄道の原形タイプを薦めようとしていた矢先の事でしたが今思い返しても残念な事です。この話には更に続きがあります。トリックスで明治鉱業17号機を発売するとの発表をインジェクションモデルで製作すると早とちりした方がおり、嫌な内容の手紙を送り付けて来た事がありましたが苦笑するしか有りませんでした。トリックス向け明治鉱業17号機は日本にも入ってきた模様でしたが22万以上はしたとの話を風の便りで聞いたものです。

当店のセキ1、セキ600はこのような遊び方を目的に製作しました。

クラウスの技術者は何の勘違いか、日本はさぞかし暑い国なのだろうという配慮からキャブ屋根は二重構造とし、暑さ対策を施しました。

特徴的な形状をした動輪のバランス・ウエイト。

石炭取り出し口等キャブ内は徹底的な作り込みを行ないました。

クラウス10形は細いボイラーと長い軸距離という条件があり、大変難しい題材です。ボイラー内にギリギリ10mm径のファウルハーベル・コアレスモーターを納め、小さいギヤーボックスの中には段付きギヤーを使用する事によりこの機関車に見合ったスロー走行を実現しています。キャブ内屋根部分にも注目。

フレーム内に落とし込まれたボトムタンク(水タンク)と灰箱まで表現しております。フレームはワイヤーカッターで切り出したもの。

アルコ~スケネクタディ 作業局D-12クラス(1997年12月発売)

さて今のところ当店最後の16番蒸機がアルコ~スケネクタディの4-4-0アメリカン。明治時代の作業局での形式D-12、後の形式6400です。D-9ニールスンの増備機ですが先台車を除き完全なアメリカン・スタイル4-4-0で当時の東海道線の最上クラス最速の列車”最大急行”の牽引機です。アメリカ製アメリカン4-4-0として関西鉄道のピッツバーグ製6500 早風クラスと双璧です。この6400クラスは当店の古典蒸気最大傑作(三つしかありませんが)なのですがしょうゆ味のアメリカ型モデルに飼い慣らされた方々には余りにドラスティックで当たり前の事なのですがほとんど完全にアメリカ型しているので受けが良くないようです。ぶっちぎりで先を行き過ぎ、とうとう皆様が付いて来る事が出来なかったモデルです。本当は先の早風クラスやブルックスの5160クラス、スケネクタディの5700クラスも作りたかったのですがあえなく撃沈。それから早10年が経ってしまった訳です。そして最近はもう形態的に面白味のあるプロトタイプを造るメーカーも無くなってしまいました。そこで又当店が名乗りを上げようと云う事になりました。以前より計画の有る8850は個人的に大好きな罐なのですが何せ当店製木造中型大型客車を8輌は牽いてくれなくてはなりません。一つアイデアが有るのでその内日の目を見ると思います。

ハンドレールや手摺りは鉄の磨き出しをステンレス線で表現。木製のキャブ屋根や窓枠はタスカンレッド。

先台車と動輪の間のディテールのシルエットは4-4-0モデルのハイライト。

4-4-0は機関車の下廻り、フレームのシースルー感が命です。また牽引力の問題もありファウルハーベル・コアレスモーター1319をテンダーに搭載、テンダーの第1、第3車輪を駆動。さらに交換用シリコンゴムタイヤ付き車輪が付属しており、これと交換する事により一段と牽引力を増す事が可能です。

アルコ~スケネクタディ 6400クラス空制化タイプ(1997年12月発売)

シャープに再現された下回りがこの機関車の見所。ワイヤーカットされたフレームは各種ディテールがふんだんに取り付けられています。二つの動輪の中心を支点にイコライジング、先台車と三点支持を形成。先台車には復元装置があり、走行中も安定した姿勢が保たれます。

スティブンスン・バルブギヤーを忠実に再現。

もちろんキャブインテリアもフルディテール。このタイプはインジェクターがバッグヘッドの両側面に付くのが特徴。ハンドブレーキ等のレバー類も完備。

そこで復活第一作はクラウス1400/1440とする事に致しました。これがあると本当にローカル模型鉄道では色々と重宝できます。マッチ箱客車や今夏発売予定のセム、セムフにもピッタリです。第二作は9200形とします。当店初のボールドウィン製のプロトタイプとなります。スケネクとの作風の違いを適格に表現していく事になりますが、更に最近の炭鉱鉄道もの製品の低たらく振り、無風状態に動きを与えたいとの思いも有ります。それにはやはり完成品での発売が肝要です。第3作は8100形、4作目はまだはっきりと決めてはいませんが貝島のコッペルをやりたいですね。まだまだもう一踏ん張りが必要です。